2021 アイデアソン報告

インクルーシブデザインアイデアソン2021

 年一回のインクルーシブデザインアイデアソンを、2021年も開催しました。

 インクルーシブデザインアイデアソンでは、多種多様な障害のあるユーザーさんと企業のデザイナーがチームになり、課題を発見し、解決を商品(グッズやサービス)を形にします。障害のない人も共に享受できるものを発想し、社会全体のアップグレードを図るスキルセットを獲得することが目的です。

開催概要

名称 : インクルーシブデザインアイデアソン2021

実施日と会場    : 
2021年11月 9日(火) 3331 Arts Chiyoda(ユーザー、メンター、事務局)+オンライン(zoom)(参加者)
11月10日(水) オンライン(zoom)
11月20日(土) オンライン(zoom)

参加者 : 33名
参加者 23名 (10社から、若手デザイナーなど)
ユーザー 5名 (四肢障がい者3名、視覚障がい者1名、聴覚障がい者1名)
メンター 5名 (チームサポート)

※ 参加企業: エビスファニチャー(株)、コクヨ(株)、(株)コンセント、トヨタ自動車(株)、トヨタ紡織(株)、豊田合成(株)、日本電気(株)、 富士通(株)、プラス(株)、フリーランス

3331 Arts Chiyoda画像です
3331 Arts Chiyoda

特長

● 長年の試行錯誤をもとに洗練されたプログラム
 ステップバイステップで、キーポイントを押さえながら、参加者がアウトプットを出せるように進行。
インクルーシブデザインの考え方、進め方を習得し、社内で展開できるようになります。

● 多様性豊かなチームと綿密なメンタリング
 全体のファシリテータや各チームのメンター、それに障害や社会について長年考えを持っていらっしゃるユーザーの皆さんとともに進行。
 ユーザーさんの障害も多種多様、チーム外の発表を検討することで、多種障害についての知識や考えが深まります。

● 他企業デザイナーとの交流、コネクション
 他社・他分野のデザイナーと協働し、他デザイン文化への気づき、ネットワーキングの機会を得られます。

オンライン化について

 2019年まで、アイデアソンはリアルの場で進めていきました。しかし、2020年はコロナ初年。2020年は、リアルでの開催が難しく、ノウハウを手探りしながら、すべてオンラインで開催。2021年は、2020年に実施した際に得られた気づきをもとに、一部をリアルの場に移し、開催しました。

・ユーザーさんがスムーズにオンライン環境に入っていただき、チームワークがスムーズに行えるようになるまでは、ユーザーさん・メンター・事務局がリアルの場に集合し、事務局がユーザーさんの参加状況や各チームのオンラインでの議論の進行をモニター。ユーザーさんの参加の様子や議論の進行状況などをメンターさんと確認しながら適宜介入。(リアル参加いただく皆様には、パーテーション・マスク・消毒の徹底・換気などを徹底し、コロナ対策しました。)

・いったんチームワークが軌道に乗る2日目からは、ユーザーさんもそれぞれご自宅などからオンラインで参加。初日にコミュニケーションの工夫点などを確認しておいたので、各チームともスムーズにワークしました。

進行

1日目(11月9日)

 ファシリテータ藤木さんから、導入講義をスタート。インクルーシブデザインの意義・事例や方法とステップを紹介しました。その後、事前に用意いただいたスライドをもとに、5人のユーザーさんが自己紹介。ご自身の障害のほか、生活・仕事の仕方、趣味など、オンラインでもいろんな観点に気づいてもらえるよう、多様な視点でのご紹介をしてもらいました。

自己紹介中の画像

 その後、チーム編成が発表され、ブレイクアウトでチームごとにユーザーさんの課題を探します。各チームの構成は、参加者デザイナー平均3-4名に加え、ユーザーさんが1名、議論とワーク推進を支援してくれるメンターが1名。
 各チームで、デザイナー1名が指名され、リーダーとしてこの後3日をひっぱってゆきます。  
 チームワークのスタートは、チーム全員でのビデオ視聴です。ビデオの内容は、事前に撮影した、ユーザーさんの商店街での買い物シーン。(映像の撮影には、神宮前二丁目商和会のまいばすけっと様、トゥルナージュ様のご協力をいただきました。ありがとうございます。)お店へのアクセスから、店舗内の移動、商品を選択し、お店の方に支援をいただきながら、レジで財布を出し清算して出るまで、一連の流れを記録した映像をチームで見ながら、ユーザーさんへ質疑応答、気づきを蓄積していきます。
 表面的な気づきからスタートし、動作の動機、しなかったこと、本人に見えている風景やわかっていないことなど、環境の捉え方のちがいや、気持ち、動機などを深掘りし、気づきの奥にある課題に肉薄します。そこへメンターさんやファシリテータ藤木さんが各チームを支援します。ある程度蓄積されたら、課題として整理し、1日目は終了しました。

アートちよだの室内全景画像

2日目(11月10日)

 1日目に整理した課題の見直しからスタートです。課題がうまく整理されなければ、解決策が価値提供につながらないので、大事なところです。ファシリテータ藤木さんから全員に、再度確認を求めます。「デザインフォーオールになっているか?」ここまでのワークを振り返り、達成状況を確認するため、2020年度のアイデアソンの最終発表の内容を共有しました。各チームは指摘や共有内容を受けて、課題を見直しつつ、解決策の検討に入ります。

 夕方まで、数時間のチームワークを行い、各チーム10分間の中間プレゼンテーションを実施。お互いのチームの検討状況を比較し、商品化提案にまで仕上げるための課題やステップ感をあらためて認識します。

チームからの中間報告

3日目のプレゼンまで(11月11日~20日)

 次回発表に向けた解決策の検討は、作られたばかりのチームで課題を掘りながらのワークで、2日間の検討だけでは時間が足りません。2日目終了ののち、チームメンバー内で連絡方法を共有し、20日までの間に各チーム内で解決案をブラッシュアップすることになりました。各チーム1回ずつ藤木ファシリテータも参加し、議論の方向を確認しました。

3日目(11月20日)、最終プレゼンテーション

 各チーム、短い時間で最終ブラッシュアップののち、各チームから最終プレゼンテーションを行いました。
 プレゼンテーションは、ユーザーさんの課題を的確に探し当てているか、提案は解決になっているか、ユーザーさんだけでなく広いターゲットに新しい価値を提供できているか、3つの観点を踏まえて行われました。
 各チームからプレゼンテーションで紹介された、各チームのワーク結果、商品提案は下記のとおりです。

 四肢障がいの方とのワークを通して発想された、遠隔でキスを伝えるマスク。ユーザーさんだけでなくパートナーさんとの関係性に気づきを得て作られたものですが、アイドルコンサートなどでの応用も期待できそうです。

 聴覚障がいのユーザーさんとのワークを通して発想された、温度感が伝わるスマホサービス。音声文字化に加え、ニュアンスや感情などが簡単に伝わる仕組みで、聴覚障がい者のコミュニケーションニーズをとらえたほか、リモートワークでの意思疎通をより正確にすることにも役立つツールです。

 スーパーで高い棚の商品を確認できない車いすユーザーとともに、陳列情報をスマホで確認できるサービスを提案。車いすユーザーばかりでなく、お子様連れのお母さま、高齢のお客様にも有効な新たなショッピングサービスになりそうです。

 視覚障がいのユーザーとともに、今いる場所についての情報を、踏んで音声で知らせる敷物。視覚障がい者が場所についての情報を得られるだけでなく、販促情報提供ツールとして、お子様への新しいショッピング体験ツールとしての可能性も秘めています。

 四肢障がいで外出に困難のあるユーザーさんとともに、イベントやコンサートを楽しむツールをご提案。障がいをきっかけに、ウィズコロナ時代のエンタテインメントのあり方に新たな提案を作りました。

それぞれのプレゼンテーションに熱心な質疑応答を経て、ファシリテータから最終講評を行い、アイデアソンは終了しました。

瑶子女王殿下のプライベート参加について

 11 月20 日最終日、瑶子女王殿下にプライベート、かつオンラインにてご参加いただき、各チームからの発表をお聞きいただいた上、コメントをいただきました。

 瑶子女王殿下は、故寬仁親王殿下のご薫陶のもとインクルーシブデザインを社会に広められる活動に長年携わっておられ、インクルーシブデザインネットワークの活動にもご関心をいただき今回のご参加につながりました。

 瑶子女王殿下にはオンライン( zoom) にてご参加いただき、下記のコメントをいただきました。

・皆様の提案はICT技術等も利用しながら、障がいを持っている方を支援できる良い提案でした。
・加えるなら今後は障がいを持つ方だけで無く、もしかしたらご高齢者の方や私のような年代にもICTの使いかたに慣れていない方もいらっしゃると思うので、幅広い方に対して優しいデザイン提案をして頂きたい。
・これからは皆さまのような若いデザインの力がより必要になってきます。
 世代を超えたよりインクルーシブなデザインを期待しています。

 瑶子女王殿下にはご参加いただき、ありがとうございました。今後も インクルーシブデザインネットワークの活動にご支援をいただければ幸いに存じます。

懇親会

 12月7日、ユーザーさん、メンターさん、参加者と事務局で、懇親会を行いました。ご参加いただいた皆様には、せっかく今回3日間のワークを通してつながりを作っていただいたデザイナー、ユーザーさんの皆さんには、連絡先を交換していただき、会社の枠組みを超えて、インクルーシブデザインの振興を進めていただければと存じます。

アンケート

 参加者の皆様へのアンケートを行った結果、「満足」42%、「やや満足」58%、とくに障がいのあるユーザーさんや他社デザイナーとの深いコミュニケーションができたことに満足度が高かったほか、なればこそリアルでの開催のご希望も多くありました。また、今後メンターとしてや運営について参加をご希望の方も数名いらっしゃり、前向きにインクルーシブデザインの展開にご関心頂いていること、開催者として大変うれしく感じており、是非何等かの形でデザイナー皆様との活動を継続できればと思います。また今後皆様にも社内でインクルーシブデザインの輪を広げていただき、各社商品を通してインクルーシブデザインを浸透していただきたいと思います。

 今後、2022年度も、アイデアソンは開催する予定です。まだまだコロナ共存の状況は続きそうですが、2020年、2021年のオンライン+リアルの経験を活かし、さらに気づきが多く、さらに参加しやすいアイデアソンに仕上げてまいりますので、ご期待ください。

全体集合写真

過去の資料