特定非営利活動法人 インクルーシブデザインネットワークでは、インクルーシブデザインに取り組む皆様、およびご興味をお持ちの皆様を対象に、インクルーシブデザイン実践事例や、開発・評価手法等の最新情報の共有をはかるとともに、参加者相互の交流の機会提供を行う目的で、インクルーシブ・テーマトークを開催しています。
「2024年度第2回インクルーシブ・テーマトーク」報告
開催日
2024年10月31日(木曜日)
16:30 Zoomオープン
17:00~18:30 講演
18:30~19:30 フリートークディスカッション(任意参加)
開催方式
Zoomによるオンラインセミナー
講演議題
「より多くの人が利用可能な行政サービスの実現を目指して」
講演者
大橋 正司 様
・デジタル庁サービスデザインユニット、サービスデザインプロセス/ガイドライン整備Tリード
伊敷 政英 様
・デジタル庁サービスデザインユニット、アクセシビリティアナリスト
川瀬 丈紘 様
・デジタル庁サービスデザインユニット、デジタルプロダクトデザイナー、コミュニケーションデザイナー
講演報告
デジタル庁サービスデザインユニットから、大橋様、伊敷様、川瀬様にご登壇いただき、「よりより多くの人に使いやすい行政サービスの開発を目指して」と題してデジタル庁でのアクセシビリティの取り組みに関してお話をいただきました。
デジタル庁は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」をミッションとし、「優しいサービスの作り手へ」「大胆に革新していく行政へ」をビジョンと掲げ日々活動を行っている。これまでの行政の活動とは大きく異なる部分が「優しい」と「大胆」のキーワードに現れている。
万人が歳をとって行く中で、できるだけ多くの選択肢を用意しておくことが大事と考え、かつ、行政サービスは代替手段がないので、アクセシビリティの確保を特に大事に考えている。具体的には、「申請や届出等の行政サービスの利用手段」の確保や「情報の伝達手段」の確保に取り組み、「公平性」「唯一性」(他のサービスで代替できない)を大事に考えている。
デジタル庁は、縦の部局のラインと、ユニットという横をつなぐグループで構成されている。「サービスデザインユニット」は、各種開発のプロジェクトに横断的にアサインされる。アクセシビリティチームは、アクセシビリティアナリスト、エキスパート等で構成され民間専門人材も多い。アナリストには視覚に障害のある職員も含まれる。
アクセシビリティに関しては「各情報システムの担当課」「アクセシビリティチーム」「委託事業者」等が連携・協力して推進している。ウェブサイトの企画、制作では、アクセシビリティ方針を策定し、開発フェーズ毎のアクセシビリティチェックの実施を推奨している。例えばデジタル庁ウェブサイトでは、デザイン案の段階からのアクセシビリティチェックを進め、公開後もJIS規格に基づく定期試験を実施している。
広報・広告(コミュニケ-ションデザイン)に関わる分野も担当しており、媒体の種別に関わらず、アクセシビリティの担保を目指しており、TVCMやYouTubeにも同様の視点で取り組んでいる。エキスパートレビューを実施しているほか、様々な障害のある方々の意見を聞く機会などを通じて要望などを収集している。新しい分野なのでガイドラインに明記されていない内容に関しても対応を努めており、ガイドラインに示された内容を守るという最低限のレベルではなく、できる事の最大化を目指している。
今後に関しては、行政サービスにおけるサービスデザインに関して、どのように多様な人々が、自分達の持っている能力や価値を交換しながら、行政サービスや社会を良くしていくための活動を展開できるか、そのために、デジタルの行政サービスはどのように作って行ったら良いのか、活用していったら良いのかを皆で考えましょうということをやりたいと思っている。そのなかでインクルーシブデザインは中核の概念として位置付けたれると考えているので、インクル-シブデザインに関わる方々を含め様々な方々と対話を繰り返しながら、○○すべきではなく、もっと提案的な、ワクワクする、楽しく使える機能を5年後10年後に向けて考えて行きたいと考えている。
行政と聞くと堅いイメージのある中で、非常に明確な目的意識と専門性を持って少人数にもかかわらず、多様な人々を巻き込んでインクルーシブな活動を実証的に実践し、それを効率よく横断的に展開されているところが印象的でした。また、行政といえども、いや、行政だからこそ、○○すべきではなく、提案的でワクワクする楽しく使える機能を目指すというところに大いに価値を感じました。(文責:岩﨑)
過去のインクルーシブ・テーマトーク
2024年度 第1回
2024年6月11日(火)
/
「第34回CSUN技術会議」にみるインクルーシブデザインの世界潮流
関根 千佳 様
・株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー
・元同志社大学政策学部教授
・放送大学・美作大学客員教授
・特定非営利活動法人インクルーシブデザインネットワーク顧問
2023年度 第3回
2024年3月7日(木)
/
「本当は危険なコミュニケーション ー『多様性の尊重』 だけでよいのか?」
飯野 由里子 様
東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター教員、
専門はフェミニズム・ディスアビリティ研究、
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ 運営委員
清水 晶子 様
東京大学大学院総合文化研究科教授、
東京大学教養学部教養教育高度化機構D&I部門長、
専門はフェミニズム/クィア理論
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2023年度 第2回
2024年1月29日(月)
「SOLIT!を作った理由」 必要な人に、必要なものを、必要な分だけ作り出す
田中 美咲 様
SOLIT株式会社代表取締役CEO、
株式会社morning after cutting my hair代表取締役、
東京防災「女性視点の防災ブック」編集・検討委員、
滋賀県産業振興審議会委員
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2023年度 第1回
2023年7月20日(木)
「CSUNカンファレンス2023」にみるインクルーシブデザインの最新動向と日本の課題
関根 千佳 様
株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー、
元同志社大学政策学部教授、
放送大学・美作大学客員教授、
特定非営利活動法人インクルーシブデザインネットワーク
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2023年度 トヨタグループ
2023年4月11日(火)
「テーマ『シビックテックとアクセシビリティ』について
~UDトークのいままでとこれから
青木 秀仁 様
Shamrock Records株式会社代表取締役、
一般社団法人Code for Nerima代表理事
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2022年度 第2回
2023年2月7日(火)
2022年度 特別企画
2022年10月4日(火)
「UD・インクルーシブデザインにおける新たな活動と世代間の共創に関して」
Blined Project 様
高橋 基就 様
大阪工業大学
橋田規子 様
芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 教授
芝浦工業大学デザイン工学部デザイン工学科学生の皆様
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2022年度 第1回
2022年7月5日(火)
「CSUNカンファレンス2022」にみるインクルーシブデザインの最新動向と日本の課題
関根 千佳 様
株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー、
同志社大学客員教授、
特定非営利活動法人インクルーシブデザインネットワーク顧問
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2021年度 第3回
2022年3月23日(水)
『パラリンピックの残したもの』~パラリンピックで進んだこと、まだまだ残る課題~
川内 美彦 様
アクセシビリティ研究所主宰
小川 歩美 様
オンボラ・コミnet 共同代表
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2021年度 第2回
2021年10月20日(水)
「社会課題と実践事例:『モバイルトイレ』の開発と社会に示す新たな可能性」
内山田 はるか 様
トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部
飯島 泰昭 様
トヨタ自動車株式会社 ビジョンデザイン部 インテリアデザイン室
大塚 訓平 様
NPO法人 アクセシブル・ラボ 代表理事
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