themetalk2023-3-report

インクルーシブ テーマトーク
アイデアソン参加者の様子です

特定非営利活動法人 インクルーシブデザインネットワークでは、インクルーシブデザインに取り組む皆様、およびご興味をお持ちの皆様を対象に、インクルーシブデザイン実践事例や、開発・評価手法等の最新情報の共有をはかるとともに、参加者相互の交流の機会提供を行う目的で、インクルーシブ・テーマトークを開催しています。

「2023年度 第3回 インクルーシブ・テーマトーク」報告

開催日

2024年3月7日(木曜日)
17:00~18:30 第1部:講演および質疑応答
18:30~19:30 第2部:フリートーク(任意参加)~参加者相互のディスカッションの場

開催方式

Zoomによるオンラインセミナー

講演議題

「本当は危険なコミュニケーション ー『多様性の尊重』 だけでよいのか?」

講演者

(50音順)

飯野 由里子様
・東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター教員
・専門はフェミニズム・ディスアビリティ研究
・一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ 運営委員

清水 晶子 様
・東京大学大学院総合文化研究科教授
・東京大学教養学部教養教育高度化機構D&I部門長
・専門はフェミニズム/クィア理論

講演報告

今回は、これまでと異なる対談形式での開催でした。
テーマトークとフリートークを通じ、多様性を意識したコミュニケーションを進めるポイント、考え方に関して多くを学ぶことができました。以下の報告は、(インクルでまとめた)お二人のお話の要旨です。

多様性を意識したコミュニケーションを実現するためには、マジョリティとマイノリティ、助ける側と助けられる側というような、今まで各人が持つ意識的な前提を見直すことが重要。

一般的なD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進の文脈では、関係者間でコミュニケーションをはかることを推奨し、潤沢なコミュニケーションが問題を解決するように言われている。しかし、コミュニケーションを図れば解決するという単純なモノではなく、コミュニケーションをすることはそもそも危険なことであり、そもそも完全に安全なコミュニケーションは存在しない。

多くの企業人には安全なコミュニケーションを進めるために、あらかじめマイノリティを見分けて、その場に問題にならないようにコミュニケーションを図りたいと言う意識が一部にある。基準や規範を決めてそれにそったコミュニケーションを行えば安全と言う考え方はかえって危険である。

誰かが誰かを助けようと声を掛ける場合でも、互いの思いやその場の状況はそれぞれ異なり、そのようなコミュニケーションにおいて、何がOKで、何が正解なのかを明確に示すことも困難である。結局は声を掛けてみないとわからないものである。

しかし、危険だからコミュニケーションしないというのではない。むしろ、コミュニケーションは危険性を意識しながら行うものである。失敗しないためのコミュニケーションではなく、普段からのコミュニケーションのあり方や、それを支える考え方を変えていくこと、そして、どのように上手に致命的な失敗ではないすれ違い(ちいさなミスコミュニケーション)を重ねていくかが大事と考える。

一方、昨今の若者には、社会にある差別を排除しないとならないと考え、自分ができる範囲で、差別や何かを繰り返さない、相手を傷つけないと強く思っている人たちが増えている。そういう人たちは責任感と自責感が強く、ミスコミュニケーションが起きてしまったことによる自罰感を持ちすごいストレスを溜め込み、コミュニケーションが取れなくなる人も多い。

そのためには、コミュニケーションにおいて正しいか正しくないかということを強く意識することをもう少し緩めて、間違えたのはまずかったが、そのような間違いを積み重ねて、コミュニケーションを改善していくという考え方が必要。またそれができるために、お互いに正解を求めず、間違いを積みながら、改善していこうというメッセージを発信するような環境作りもこれからの課題である。

企業の例えばCMやWebサイト意図していない炎上がよくある。炎上に対し企業はいつも怯えており、失敗しないにはどうしたらいいかを考えている。どのような視点が必要なのか。

炎上に関して謝罪する以上に炎上した事実に対してどのように対応するかがすごく大事。現状では何が問題だったのか議論がなされないことが多い。炎上は貴重な対話のきっかけとして捉える姿勢が大事なのではないか。

特に、問題を指摘した人たちは、こういう理由で、ここがやっぱりおかしいと思うと話をしていて、その点を考えてほしいと思っている。指摘した各人の問題意識は必ずしも同じではないことがある。何が問題で、何は問題では無いのかきちんと話せる環境が有れば良い。

現状のインターネット、SNSの世界では、相手を謝らせることに固執する人が多く、それが一つの問題でもある。我々は、大規模なコミュニケーションの世界で、どのように適切なコミュニケーションを行う方法を見いだしてない。そのような中で、炎上が起きた後に、誰とどのような会話を行うか、その仕組みを作ることを考えて行く必要がある。そうして問題の指摘を受けた際にお互いに、問題点や譲れないポイント等を話し合い、次に進む方向を見つけて行く事ができるような体制を作ることが課題。

市民運動、社会運動が比較的分厚くある国や地域では、LGBTの問題などでメディアウォッチの仕組みがある。活動家、アーティスト、研究者、ジャーナリストなどがそれぞれいろいろな意見を出し合って造って進めており、問題がある際には介入を行い、あるいは相談対応を行っている。そういう体制も一つの形と考えられる。

日本はこのような社会運動が活発ではないが、企業がそのような活動を育て、良い商品つくりにつなげていくことも有効と考えられる。

過去のインクルーシブ・テーマトーク

2023年度 トヨタグループ
2023年4月11日(火)

「テーマ『シビックテックとアクセシビリティ』について
 ~UDトークのいままでとこれから

・青木 秀仁 様:Shamrock Records株式会社代表取締役、一般社団法人Code for Nerima代表理事

➡ 報告

2022年度 第2回
2023年2月7日(火)

「誰もが等しく直面する『ヒアリングフレイル』の理解とその対応策について」

・中石真一路 様:聴脳科学総合研究所 所長、ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社 代表取締役

➡ 報告

2022年度 特別企画
2022年10月4日(火)

「UD・インクルーシブデザインにおける新たな活動と世代間の共創に関して」

・Blined Project様
・大阪工業大学 高橋 基就 様
・芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 教授 橋田規子 様、学生の皆様

➡ 報告

2022年度 第1回
2022年7月5日(火)

「CSUNカンファレンス2022」にみるインクルーシブデザインの最新動向と日本の課題
・関根 千佳 氏:株式会社ユーディット会長兼シニアフェロー、同志社大学客員教授、特定非営利活動法人インクルーシブデザインネットワーク顧問

➡ 報告

2021年度 第3回
2022年3月23日(水)

『パラリンピックの残したもの』~パラリンピックで進んだこと、まだまだ残る課題~
・川内 美彦 様:アクセシビリティ研究所主宰 
・小川 歩美 様:オンボラ・コミnet 共同代表

➡ 報告

2021年度 第2回
2021年10月20日(水)

「社会課題と実践事例:『モバイルトイレ』の開発と社会に示す新たな可能性」
・トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部 内山田 はるか 様
・トヨタ自動車株式会社 ビジョンデザイン部 インテリアデザイン室 飯島 泰昭 様
・NPO法人 アクセシブル・ラボ 代表理事 大塚 訓平 様

➡ 報告

2021年度 第1回
2021年7月27日(火)

「実践事例:インクルーシブデザイン視点で既存エレベーターホールの動線改善」
・株式会社コンセント プロデューサー 堀口真人 様